ずいぶん前(都心部の不動産市況が今のように活況となる前)のお話しです。
懇意にさせていただいている不動産業者さん(地元では名うての業者さんで、良いか悪いかは別として、不動産関係の調停・訴訟を数多く経験されています)から、相談があるということで会社に伺いました。本題の相談が終わった後、
『面白い話がある。うちが▲グルーブに貸している土地あるでしょ、先日そこの担当者が来て、「不動産鑑定士に鑑定評価をお願いした結果にもとづいて賃料改定(減額)のお願いをしたいのです。鑑定評価書もお渡しするので、ご検討お願いします」と言われたから「うちがその鑑定書を読む義務でもあるの?もらっても忙しいから読まないよ」、「何とかご査収ください」と顔引きつらせながら言われるので、担当者はサラリーマンだし可哀そうだから「ゴミ箱行きでいいならもらっておくよ」と言ってもらっておいた』
と言われました。他の鑑定業者の発行とはいえ、鑑定書をゴミ箱行きという言い方にはさすがに私もカチンときて抗議しましたが、もともとブラックジョークや面白おかしく話すことが好きな方で、不動産鑑定士である私に対する当てつけもあったのかもしれません。
幸いゴミ箱行きにはなっていなかったので、その鑑定書を見せてもらいました。対象不動産は好立地にあり、賃貸をスタートするにあたり何社かの法人が候補として手を挙げ、一番高い地代を提示した▲グルーブに決めたそうです。業者の感覚として3割程度高い水準だったようです。
鑑定書にもその辺りの経緯がキチンと記載されていました。ところが、鑑定評価額の決定では、いわゆる折半法により唯一大幅に下落した試算賃料となっている差額配分法が専ら重視されていました。どうやって取集したのか感心するくらい周辺の地代(新規地代)の事例を数多く記載して、現行賃料がいかに高額であるかをアピールしていました。
要は、高いから下げるべきだ、という鑑定評価になっていました。これでは経験豊富な業者さんを納得させるのはとうてい無理でしょうし、仮に訴訟までいったとしても、賃料減額の主張の正当性を裏付ける証拠資料とはならないだろうなと思いました。
ちなみに、このお話し、ずいぶん前とはいっても、直近合意が明確に重視されるようになった平成26年の不動産鑑定評価基準改正後のお話しです。 なお、このお話しに関連してポイントとなるのが「動じない」という点かと思います。この点については次のブログに回します(文責:杉若)