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オーナーが家賃の増額をテナントにお願いする場合のポイント

 当相談所は調停・訴訟の段階における借地借家の問題解決に力を入れていますが、当事者の交渉(いわゆる“お願いベース”の協議)の段階における相談にも積極的に応じています。そこで、今回は、オーナーが家賃の増額をテナントにお願いする場合のポイントについて整理してみます。

【例】
 10年前から賃貸マンションの1階部分の一部を店舗(使用目的は学習教室に限る)として月額20万円(月坪1万円)で貸している。先日、近所の不動産業者と話をしたところ、「最近は景気も良くなり、この辺りの店舗なら月坪2万円はいけますよ」という業者評であった。
 この業者評を聞いて、オーナーであるあなたは是非とも家賃を増額したいと考えました。気を付けるべきポイントは何でしょうか?

★使用目的(テナントの業態)
 不動産業者の言う「この辺りの店舗なら月坪2万円」というのは、どういった業態をイメージして言っているのか注意が必要です。コンビニなのかスマホショップなのか薬局系なのか、はたまた飲食系なのか。成約事例等に基づいて、何らかの業態をイメージしての業者評かと思いますので、可能であれば業者さんに確認してみることも必要でしょう。
 一方、あなたの契約では、よくある店舗系の契約と同様、使用目的を限定しているわけです(この例では学習教室)。家賃の増額をお願いするにしても、テナントが負担できる増額でなければ交渉がまとまるはずがありません。

 今一度、契約上の使用目的(テナントの業態)を確認して、現在の家賃と業者評に乖離が生じているような場合、それは(ア)業態の相違に起因するものなのか、あるいは(イ)最近の景気回復による一般的な賃料上昇に起因するものなのか(現在の家賃が景気回復による賃料上昇から乖離してしまったのか)、(ウ)アとイの両方に起因するものなのか、このあたりを冷静に判断して交渉することが不可欠となります。
 とはいっても、このような判断はなかなか難しいものです。テナントの売上の推移を把握することなどまずは不可能ですし、テナントの家賃負担力の把握は困難を極めます。
 ちなみに、この例のような賃料のことを専門用語で「継続賃料」と呼びます。新規に貸す場合の賃料(新規賃料)と区別するための用語と思っていただければ分かりやすいかもしれません。不動産業者の言う月坪2万円は新規賃料のことでしょうから、そもそも、その水準まで増額をお願いすることには無理があるとも言えます

 以上、この例のように、継続賃料には難しいポイントがあるわけです。どのあたりの水準から交渉すべきか、仮に交渉がまとまらずに調停→訴訟までいく覚悟をするにしても、どのあたりに落ち着きそうか、予め想定しておくは大事です。
 専門家に相談するのは敷居が高いと思われた場合でも、我々ならば相談しやすい環境と明朗な相談料を設定していますので、安心してご連絡ください。(文責:杉若)

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