滋賀県のある村の端にある土地約2ヘクタールは、大半が林地でそのほか池、農地がありました。
地元の所有者の大半はゴルフ場ができることに賛成されていましたが、当然のことながら反対の方も一部あり、また外部の所有者(不動産業者)の方もいらっしゃいました。
地形はなだらかな丘陵地で大きな池もありゴルフ愛好家から見ればおもしろいゴルフ場ができる素地でした。
ゴルフ場のオーナーが一目で魅了されたのですが、いざ開発になると様々な越えなければならない難問がありました。
まず第一に林地のうち何ヶ所かが「土砂流出防備保安林」に指定されていました。村の人たちは自分たちが国にお願いして「保安林」にしてもらったのだから簡単に解除できると思い込んでおられたようでした。
指定されると固定資産税が免除になるので村の方たちは簡単に指定にOKされたようですが、保安林は所有者であっても樹木の伐採等についても制約を受けます。
また解除は保安林の指定理由の消滅、公益上の理由により必要が生じた場合を除き解除できないのです。
次に計画地の中の中央部に農地があり開発の障害になりました。
この農地は山にかこまれた細長い農地で平坦な農地に比較して水刷毛が悪いのか地元の農家の人にとって売却してもいいという方が多かったのです。
ところがこの農地はなんと農振地域のうちの農用地に指定されており、農地から他の用途に転用が出来ないということでした。
これもゴルフ場開発は制限される要因となりました。
農地はあまり広くはないのですが、ゴルフ場のド真ん中にあるためコースがとれないという問題を孕んでいました。
但し農振地域、農用地問題は県の農政課が見直しの時期に来ていたこともあって、同面積の別の農地を指定地に替えることでかろうじて解決出来ました。
そして「保安林」についてはかなりの難問で、ここでは書けませんが裏技も使われたのではないかと推測されるほど大変だった様です。
公式には山林を一定間隔で残存させて林の成長を確保するよう樹林帯を設ける設計で開発許可がおりたということでした。
当初予定の6ヵ月で開発許可を取得し、工事に着工予定でしたが、結局2年近くを要したのではなかったかと思います。
不動産鑑定士の仕事は直接そうした実態が見えないままに保安林や農用地の点在するゴルフ場開発用地の価格を求めるのでいつもこれで大丈夫ですかと自分自身に問いかけてしまいます。(文責:石川)