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借地借家法の入門講座 Part4

不動産鑑定士 五島 輝美

借地の法制度に関する重要条文である第10条(借地権の対抗力等)と第11条(地代等増減請求権)に突入します。

目次

新法第10条(借地権の対抗力等)

①借地権の対抗力とは

土地所有者AがBに借地権を設定した後に、Cに土地を譲渡したケースにおいて、借地権者Bが土地の譲受人Cに借地権を主張できるか否かが、借地権の対抗力(対抗要件)の問題である。

民法では、登記が不動産に関する物権の得喪・変更の対抗要件(民法177条)と規定している。また不動産の賃借権も登記すれば、その後にその不動産について物権(所有権や地上権など)を取得した者に対して対抗力を生ずる(民法605条)としている。
従ってBの借地権が地上権でも賃借権でも、その権利登記をすれば土地の譲受人Cに対して借地権を主張できる。
地上権は物権であり、物権には登記請求権が認められているので、地上権の登記をすることによって借地権者は対抗力を確保できる。

しかし賃借権は債権なので、賃貸借契約で特約しない限り登記請求権は認められない。
この登記の特約は実際には殆ど実行されないので、賃借権の登記を借地権の対抗要件とする民法の規定だけでは借地人(賃借人)の地位は不安定になる(※)。

そこで新法10条は、借地権者が地上権や賃借権の登記を取得していなくても、借地上に登記のある建物を所有することによって、借地権を第三者に対抗できるという代用制度を設けた。10条は旧・建物保護法を、そのまま引き継ぐ規定である。

(※)賃借権の登記のない土地の賃借人に対抗力がないことを奇貨として、地主が土地を第三者に売り渡し、譲受人が賃借人に対して所有権に基づく建物収去・土地明け渡しを求める弊害が数多く生じた。これが地震売買と言われ社会問題となり、明治42年の建物保護法制定に至る契機となった。

②借地権が対抗力を備えるための要件

土地取引の安全を確保するためには、取引の目的たる土地に対抗力を有する借地権があるか否かが判明できる外形が必要である。そのために10条1項では、借地上に建物が存在し、借地上の建物が借地権者の所有(※1)かつ借地権者名義の登記(※2)がされているという要件を定めた。

(※1)借地上の建物の登記が対抗要件となるためには、借地権者と建物所有者が一致していることが必要。借地上の建物が同居親族の長男や配偶者などの所有であったり、譲渡担保が設定されて債権者に所有権が移転しているときはダメ。

(※2)建物が未登記、建物の登記が借地権者でない者の名義ではダメ。借地権者が建物の登記を家族名義にするなど、他人名義の登記をすることは珍しいことではないが、借地権との対抗力は、建物の登記が借地権者本人の名義でなければ10条による対抗力は認められない。

③建物滅失の場合の暫定的対抗力

借地権の存続期間内に建物が滅失しても、借地権は消滅しない(新法第7条と8条を復習して下さい)が、このことと借地権の対抗力は別問題であり、1項本文による対抗力は建物の滅失により失われる。

そこで10条2項に2年間の暫定的な対抗要件を定めている。建物が滅失した場合において、借地上の見やすい場所に建物特定に必要な事項、滅失日、建物を新たに築造する旨を記載した掲示をしている場合は、借地権の暫定的対抗力が維持される。

しかし暫定的な対抗力であるので、建物滅失から2年を経過すると掲示による対抗はできなくなる(2項但書)。
2年を経過した後も対抗力を維持するためには、建物滅失後2年以内に借地権者が新たに借地上に建物を再築し、かつ借地権者名義で登記をする必要がある。

新法第11条(地代等増減請求権)

地代等(地上権設定による土地使用の対価である地代と土地賃借権設定による土地使用の対価である借賃をあわせて地代等と言う)は、借地当事者間の合意によって決められ、契約期間中は合意した地代等に拘束されるのが原則です。しかし借地契約は長期に渡るので経済的事情等の変動により、合意した地代等を維持することが不相当(合意した地代等で借地当事者を拘束することが、衡平の原則に反する)となる事態が想定される。そこで新法第11条に地代等の増減請求ができることを定めた。

この入門講座Part4を読了した後に、本ウェブサイトの「職業的専門家に向けた訴訟鑑定講座:継続賃料評価のイメージ化Part1」のⅠ 民事裁判の原則から相当賃料を考える Ⅱ 継続地代の基礎認識 の箇所に挑戦していただければ、新法11条の理解が深化すると思う。

①地代等増減請求の要件

地代等増減請求をするためには、合意した地代等が不相当となっていることが必要であり、不相当か否かの判断要素として11条は次の事項を例示している。

租税その他の公課の増減
土地の価格の上昇もしくは低下、その他の経済事情の変動
近傍類似の土地の地代等との比較

条文に例示した要件(経済的事象の変化)以外にもその他の事情(経済的事象以外の契約当事者間の個人的事情であっても、当事者が地代額の決定の際に考慮し地代等決定の重要な要素となったもの)もあわせて不相当か否かを判断することが必要である。

②地代等増減請求権は形成権

一方的な意思表示によって、法律効果が生ずる権利を形成権と言う。地代等増減請求権も形成権であるので、増減請求の意思表示が相手方に到達すれば、地代等が請求額まで増額あるいは減額されるという効力が生ずる。増減請求の効果は将来に向かって生じ、過去に遡って増減請求することはできない

③不増額特約と不減額特約

不増額特約(増額請求をしない特約)があれば、賃貸人は拘束され増額請求はできない(10条1項但書)。不減額特約については、契約の条件に関わらず特約には効力がないという最高裁判例がある。

地代等増額請求権を行使したが、相手方との解決に向けた協議がまとまらないときは訴えを提起することになるが、その後の裁判所での進行等(前置調停、訴訟と相当賃料など)については、「地代の値上げを検討している地主さんへ」という連載でわかりやすく解説していきます。

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