①地代の値上げを検討している地主さんからの相談依頼があり、まず手始めに物件カルテの作成に着手した。医師が作成する病理カルテと軌を一にするものであり、賃貸している土地を多面的に調査・分析して作成され、裁判所での地代交渉を担当することになる弁護士の事実認定をサポートする。
②法務局で入手した資料(公図・土地の登記事項証明書・地積測量図:登記事項証明書と地積測量図は周辺地についても必要)と住宅地図等を携えて、現地調査を行なった。現地調査では現場の空気を直に呼吸し、現地で疑問箇所をどれだけ発見できるかが勝負である。本件の場合、すぐに重大ポイントに遭遇した。貸地部分が存する1筆地の具体的位置・形状・地積が、現況と法務局資料とでは全く異なっている。それで公図、周辺の土地分筆図(地積測量図)と建物所在図、航空写真等を合成して「重ね図」を作成して検証したところ、1筆地の現況地積は公簿地積の約1.7倍であること、形状等は公図では長方形状の中間画地・現況はL字状の二方路画地であることもわかった。また厄介なことは、地代値上げを目論む貸地が公図上は他人地の一部となっているので、訴訟に突入した場合には、境界確定を行ない貸地の存する1筆地の実測図面を作成のうえ公図訂正をする必要があるが、過大な費用がかかる。
③次に市役所の固定資産税課に赴き、地主さんの委任状を提示して「公課証明書と評価調書」を入手した。当市の地番図は法務局に備え付けられた公図をベースに作成されており、公図とほぼ同一なものであった。地番図は現況に符合していないが、どのように1筆地を確定して評価額及び課税標準額を決定しているかを知りたいので、評価調書の提供を求めた。地番図が現況と違うことを話したが、固定資産税課の職員はそのような実態が起こり得ることについて全く認識していなかったので、大阪・京都などの古い都市では公図と現況が異なる箇所が多々あることを教示したところ、興味を示し感謝された。
④さて評価調書を見ると、驚いたことに登記地積の全域が「非住宅地」と把握されており、「小規模住宅減税」をしていないことが判明した。1筆地の約1/2が駐車場用地、残り約1/2は貸地として推移しており老朽化した2階建共同住宅1棟と平家建居宅2棟が現存する。約1/2に小規模住宅減税を適用すると、その部分の課税標準は1/6となるので税額も1/6となるが、全域を駐車場敷地として把握されているため、著しく安い地代しか受け取っていないのに高い公租公課を地主は負担し続けている。なお地主さんに公租公課の過徴収による還付請求をすることを、後日に提案したことも注記しておく。(文責:五島)