MENU

借地借家法の入門講座 Part3

不動産鑑定士 五島 輝美

細かいことには拘らずに、借地借家法の大筋をつかんで下さい。

目次

新法第7条(建物の再築による借地権の期間延長)

7条は、借地契約スタート時の借地権の存続期間(新法3条を復習して下さい)で建物が滅失した場合の規定です。最初の借地期間更新後の期間はダメ内であれば、建物が消失しても借地権は消滅せず存続するので、建物を再築することができる。本条は借地権の最初の存続期間内の法定更新を定めたものと言える(5条が借地権の存続期間終了時の法定更新の定めであることを確認して、先に進んで下さい)。

なお新法の施行日(平成4年8月)の前に設定された借地権については、本条が適用されず旧法ルールに従うことになる。

①旧法ルールと新法ルール

旧法ルール:借地契約に借地権の存続期間の合意がなければ、その期間満了前に借地上の建物が朽廃したときは、借地権は消滅する(Part2・借地上の建物の朽廃による借地権の消滅 を参照のこと)。

新法ルール:建物が消失した原因(旧法の朽廃に該当する場合、火災・風水害による建物の消失、自ら取り壊して建物が無くなる場合も、全て滅失という新法用語のもとで)を問題にしないで、建物が消失しても借地権は当然には消滅しないとした。最初の借地権の期間内は土地利用を続けることは当然であり、建物が消失しても従前建物と同程度の建物を再築する権利を借地人は有していると新法は考える。一方、借地期間がある程度経過した後に建物を再築することになるので、例外的に借地権の残存期間が長期を余す(約定により30年以上の存続期間を定めたケース等が該当)ものでない限り、再築した建物の耐用年数は借地権の存続期間を超える。そこで借地権設定者との利害調整を図ることも視野に入れ、一定の条件(借地権設定者の承諾)のもとで、借地上の建物の再築により借地権の存続期間が延長することを定めた。

②借地権設定者の承諾がある場合

借地権設定者が承諾した日又は建物が築造された日のうちの、早い日から20年間は借地権は存続する。但し、借地権の残存期間がまだ20年以上あるとき、又は当事者が合意により20年以上の期間延長を定めたときは、その期間が借地権の存続期間となる(7条1項)。また借地権者が借地権設定者に対し、借地権の残存期間を超えて存続する建物を築造する旨を通知し、借地権設定者が通知を受けた後2ヶ月以内に異議を述べなかった場合は、黙示の承諾として存続期間が延長されることも定めた(7条2項)。

③借地権設定者の承諾がない場合

借地権設定者の承諾がなければ、期間延長はしない。しかし承諾がなく建物が築造された場合でも、借地上に再築された建物が存在するので、期間満了による法定更新の規定の適用により、借地権者が更新の請求(5条を確認してください)をすれば、借地権設定者が遅滞なく異議を述べない限り契約は更新され、また異議を述べた場合でも正当事由がなければ法定更新される。借地権設定者の承諾のない建物が再築された事実は、正当事由の判断(土地利用状況の補充的要因で)の中で考慮される仕組みです。

    

新法第8条(借地契約の更新後の建物の滅失による解約等)

8条は、借地契約更新後に建物の滅失があった場合の取り決めです。ここでの契約更新には、合意による更新・5条の法定更新・7条1項の建物の再築による期間延長のいずれも該当する。全ての更新(※)後の建物滅失について本条が引き受けることになっている。

 (※)定期借地(新法22~24条)の場合は借地契約が更新されることはないので、借地上の建物が滅失しても本条が適用されることはない。

建物滅失が契約更新後の期間中であるときは、建物滅失により借地権が消滅する場合があり、借地権者・借地権設定者の双方に借地契約の解約申入れにより、借地契約から離脱するか否かの選択権が認められている。

①借地権者からの契約解消

更新後であっても借地権の存続期間を超えない建物であれば、借地権設定者の承諾を得ずに再築することは問題がない。法定更新(4条を復習して下さい)に際して、契約で存続期間を定めない場合は、新法適用の借地権は20年・10年ルールにより、更新後の借地期間は概して短く設定されている。その期間中で建物が滅失した時点からの残存期間はさらに短くなるので、建物を再築するのは現実的とは言えない。しかし建物を再築せずに建物が滅失したままにしておいても、地代の支払義務はある。そこで契約更新後に建物が滅失した場合は、借地権者に借地契約を終了地上権の放棄、土地賃貸借の解約の申入れさせる権利を与えた(8条1項)。地上権放棄、土地賃貸借の解約申入れの意思表示が借地権設定者に到達した日から3ヶ月を経過することによって、借地権は消滅することにした(8条3項)。

②借地権設定者からの契約解消

更新後は借地権設定者の承諾がなければ、借地残存期間を超えて存続する建物の再築はできない。残存期間を超えて存続する建物を借地権設定者に無断で建築をした場合には、借地権設定者に借地契約の解消を申し入れる権利を認めた(8条2項)。

    

新法第9条(強行規定)

9条は、借地権の存続期間等に関する3~8条は強行規定(借地権者に不利な特約は無効となる規定)であることを宣言する条文である。法律の規定と異なる内容の特約が定められたとき、特約の効力が肯定される規定を任意規定、特約の効力が否定される規定を強行規定という。強行規定には特約の効力が全て認められないものと、片方の契約当事者のみに限って否定されるもの(一方的強行規定)があるが、新法では多くの条文が借地権者・建物の賃借人に有利な特約は有効、不利な特約は無効となる一方的強行規定である。

①無効となる特約の例示

3条:当初の借地権の存続期間を30年未満とする特約など
4条:更新後の借地権の存続期間を10年未満とする特約など
5条:更新請求をしない特約など(借地期間の満了と同時に建物を借地人から地主に贈与すべき旨の特約が判示されている)
6条:異議に正当事由を要しないとする特約など
7条:建物が滅失しても建物の再築はできないとする特約など

②更新料特約

借地契約の更新に際して、更新料請求が可能となるか否かについても、9条による5条の解釈により、「借地人に何らの金銭的負担を負わせることもなく更新を認めることが、借地借家法の趣旨である」と東京地裁は判示し、更新料支払いが事実たる慣習になっていることを否定した

ようやく9条まで到達しました。次回からは「借地権の効力」(新法11条は、いよいよ地代等増減請求権です)に突入します。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

記事担当者名はタイトル下又は文末に記載しております。

目次